ランクセス、2040年までにクライメイト・ニュートラルを目指す

ランクセスは2040年までにクライメイト・ニュートラル(気候中立)を実現したいと考えています。これを達成するため、私たちは明確な戦略を立て、主要プロジェクトを始動させました。ランクセスはこの新たな目標に向けて、これまでの実績により裏付けられた効果的な気候保護のコミットメントに基づき、戦略を推進しています。しかし、私たちだけではクライメイト・ニュートラル(気候中立)を達成することはできません。政治的な支援も必要となります。
クライメイト・ニュートラルとは?

クライメイト・ニュートラル(気候中立)は、国民、企業、団体などが、日常生活や製造工程などにおける温室効果ガスの排出量を認識し、それを削減する努力を行うとともに、削減が困難な排出分については、他の場所や活動で削減・吸収することにより、その排出量の全部を埋め合わせる(相殺する)といった考え方です。

世界中での気候対策への取り組みが本格化する中、日本でも「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことが宣言されました。一般的に広く知られるようになった「カーボンニュートラル」と「クライメイト・ニュートラル(気候中立)」はほぼ同義ですが、二酸化炭素などのカーボンのみを指す「カーボンニュートラル」に対し、「クライメイト・ニュートラル(気候中立)」は、京都議定書で定義されているすべての温室効果ガスを含んでいます。

クライメイト・ニュートラル- 差し迫った課題


パリ協定では、人間や環境への悪影響を軽減するため、世界の平均気温の上昇を2℃未満に抑える目標が掲げられました。行動を起こすのが早ければ早いほど、問題解決への時間的な猶予が与えられます。そのため、ランクセスはこの気候保護の目標にいち早く取り組み、その責任を真摯に受け止めています。2004年の設立以来、ランクセスは自社の温室効果ガス排出量を約650万トンから約320万トン(共にCO2換算)へと半減させています。そして今、次のステップへと踏み出します。ランクセスは2040年までにクライメイト・ニュートラル(気候中立)の実現を目指します。

ランクセスにおけるクライメイト・ニュートラル

自社施設からの排出量を大幅に削減

極めて低排出なエネルギーまたはクライメイト・ニュートラル(気候中立)なエネルギーのみを購入

2040年までに排出量を320万トンから30万トン未満に削減

残りの排出分は、代替措置により相殺します。

 

クライメイト・ニュートラルに向けた中間目標がすでに掲げられています

「2040年までのクライメイト・ニュートラル(気候中立)達成を新たな目標とし、私たちはグローバルな特殊化学品メーカーとしての責任を果たして参ります。そして同時に、お客様にとってのより持続可能なパートナーを目指します」

マティアス・ツァハト

ランクセス経営委員会会長 兼CEO

化学は最もエネルギー消費の多い産業の1つです。1990年以来、エネルギーの効率化は大きく進歩してきました。ドイツ化学工業協会の研究によれば、生産量は1990年当時に比べ69%上昇しています。一方、エネルギー消費量は14%、温室効果ガスの排出量は48%まで減少しました。ランクセスは常に積極的な目標を自らに課し、それを達成してきました。

 

気候保護活動の成功実例

クレフェルト拠点における温室効果ガスN2Oの相殺

N2O(亜酸化窒素)は気候に有害な温室効果ガスの1つです。2009年、私たちはドイツのケミカルパーク・クレフェルト・ユルディンゲン拠点において第2亜酸化窒素還元プラント(LARA)を稼働させ、これにより亜酸化窒素ガスを分解し完全に相殺することに成功しました。これには、1000℃以上に熱すると、酸素と窒素に分解される亜酸化窒素の性質を利用しています。LARAは「発想の国ドイツ―365のアイデアコンテスト賞」および「ドイツ産業協会(VCI)によるノルトライン・ヴェストファーレン州レスポンシブル・ケア賞」を受賞しました。この2つのLARAは、毎年最大150万メートルトン相当のCO2排出量を削減します。

熱電併給システムのプライオリティ

ランクセスは、アントワープ(ベルギー)の港湾地区において、現地の複数の化学会社と共に蒸気による熱電供給プラントを操業しています。2019年から稼働している同プラントは、エネルギーコストの削減および年間約1万トンのCO2排出量の削減に寄与します。また、共同で運営するすべての企業の成果を合計すると、毎年10万トンもの削減となります。

2つの洗練されたアイデア - 熱電併給とバイオマス

ブラジル、ポルト・フェリースのサイトにある、電力と蒸気を発生させる高効率なコージェネレーション(熱電併給)プラントは、最大90%のエネルギー効率に達します。この熱電併給プラントは2010年から稼働しており、その稼働にはバイオマスが利用されています。バイオマスとは、例えば再生可能な植林地から出た廃材です。再生可能で環境に配慮した原料により、この発電所はサトウキビが収穫までに吸収する程度のCO2のみを排出する、つまりはカーボン・ニュートラル(気候中立)な設備となっています。

国連気候会議の予定はない?そんなことはありません!

持続可能な未来に向けた若い人たちのコミットメントを強化するため、私たちは多数のプロジェクトをサポートしています。一例として、2019年にケルン大学の経済・社会科学学部において、PIM & CEMSスチューデント・クラブのクライメイト・プラン・ゲームのスポンサーを務めました。30カ国から180名の生徒が集まり、実際の状況を想定して準備されたレクチャーホールで、パリ協定での気候保護についての話し合いをシミュレーションしました。その結果、パリ協定になぞらえた「ケルン協定」では、気候目標を1.5℃とさらに厳しく定めました。

CO2排出量の少ない、より望ましいビジネス分野

ランクセスは、CO2集約度の低い特殊化学品を重視し、製品ポートフォリオの向上に努めています。ランクセスは近年、南アフリカのニューキャッスルおよびメレバンク拠点におけるクロム化学品事業を売却しました。その結果、2020年から年間20万トンのCO2を削減し、気候への影響緩和に成功しました。ランクセスは事業の買収・売却など、戦略的決定においても、CO2排出量を重要な指標としています。

気候保護推進機関との密接な連携
私たちは2018年から、IN4climate.NRWイニシアチブのパートナーとして実践的に活動しています。ランクセスは、ノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州の経済・イノベーション・デジタル化・エネルギー省と連携し、産業と科学、そして政治当局に向けた、気候に配慮した戦略および革新を推進しています。目的は経済成長とパリ協定における気候保護目標の両立です。NRW州における温室効果ガス排出量のうち19%を占める産業界は、重要な責任を負っています。クライメイト・ニュートラル(気候中立)を達成するには、温室効果ガスを排出する各々が国境を越えて変化の過程を共に形成していく必要があります。6つの有名な科学機関が協働し、ヴッパータール研究所の支援の下、科学的視点からIN4climate.NRWの研究を推進しています。

「IN4climate.NRWはパリ協定の気候保護目標の達成に向け、3つの決定力を持つグループを結集させました。政府、科学、そしてビジネスです。これはドイツ独自のことですが、今まさに、産業に求められていることでもあるのです。すべての産業と関連分野が、新たな技術と革新の発展のために連携して初めて、私たちは温室効果ガスの削減が可能となり、2050年までのドイツのクライメイト・ニュートラル(気候中立)達成を確かなものにすることができるのです」

アンドレアス・ピンクヴァルト

ノルトライン・ヴェストファーレン州 経済・イノベーション・デジタル化・エネルギー省©MWIDE NRW/F.Wiedemeier

気候目標のための3つの基盤

大幅な削減を掲げたプロジェクトの遂行

成長と排出量の分離

製造プロセスと技術の革新を強化

これらがランクセスのクライメイト・ニュートラル(気候中立)達成に向けた3本柱となる戦略です。


成長と排出量の分離

ランクセスは環境に配慮した方法で成長を続けます。私たちは自社の構想を明確に定めています。サプライヤーおよび合併の候補となる企業は新たな気候戦略に適合しなくてはならず、CO2バランスは重要な投資基準となります。加えて、自社のCO2削減は管理職賞与制度の評価基準の1つとなります。

ランクセスの脱石炭戦略

気候へのさらなる配慮のため、私たちは石炭を用いないエネルギー供給を計画しています。インドのナグダおよびジャガディア拠点からの始動を予定しています。また私たちは自社の大規模なケミカルパークにおいても、石炭の段階的使用廃止に向けた削減を行っています。

ランクセスが温室効果ガスN2Oを分解し相殺する方法  

アメリカでは亜酸化窒素と呼ばれる一酸化二窒素(N2O)は笑気ガスとしても知られ、プラスチック前駆体の製造過程における副生成物です。人間への害はありませんが、気候にもたらす悪影響はCO2のおよそ300倍と言われています。ところが、N2Oは高温に熱することにより、酸素と窒素に分解することができるため、適切に処理することにより、完全な相殺が可能なのです。これはすでにドイツのクレフェルト・ユルディンゲン拠点において実行しており、2020年からはベルギーのアントワープでも実施されています。N2O分解の過程で発生させる熱は、製造のエネルギーとして使用しています。ランクセスのクレフェルト・ユルディンゲンプラントは、この分野におけるいくつかの受賞歴もあり、技術的先駆者となっています。

製造プロセスと技術の革新の強化

ランクセスは、2040年までにクライメイト・ニュートラル(気候中立)を実現するため、既存の製造工程の多くを見直しています。例えば、フェアブント(統合)構造(工場間の熱交換や空気浄化に関するもの等)を引き続き改良していきます。他の工程は、工業規模ではまだ開発されていません。そのため私たちは、クライメイト・ニュートラル(気候中立)な製造プロセスと技術の革新にさらに焦点を当てて研究を進めています。

喫緊の課題:適正価格の再生可能エネルギー

再生可能エネルギーの十分な供給量と競争力のある価格設定

国の制度との二重負担にならない、機能的なEU内排出量取引制度

排出量削減のための新規プラント建設における承認プロセスの簡素化および迅速化

「短期的にはやはり競争力のある価格のエネルギーが必要です。そして長期的には、十分な量の再生可能エネルギーを適切な価格で入手できるようになれば、産業は自然と本質的なクライメイト・ニュートラル(気候中立)への解決策に到達できると思います」

マティアス・ツァハト
ランクセス経営委員会会長


ビジネスのため、社会のために

気候対策への高い目標と厳密な計画は、ランクセスのためだけでなく、お客様にとっても、そして社会にとっても有益なものです。


持続可能性へのコミットメントにより、ランクセスはより望ましいサプライヤーとなります

温室効果ガス削減への投資のほとんどは利益の増加に繋がります

ランクセスはさらに厳しくなる将来的な規制を見込み、それを満たすべく取り組んでいます

私たちはパリ協定の気候保護の目標達成に貢献しています