カラーコンクリートの魅力と可能性

フィンランドのキュロ・ディスティラリー社のジン・ウィスキー蒸留所がフィンランドコンクリート建築賞を受賞

 

フィンランド の キュロ・ディスティラリー社のジン・ウィスキー蒸留所がフィンランドコンクリート建築賞を受賞
© 2019 Kuvatoimisto Kuvio Oy
世界最北に位置するジン・ウイスキー蒸留所に新しく作られた樽貯蔵施設のファサードに、ランクセスの無機顔料「バイフェロックス®(Bayferrox®)」が採用されています。このファサードは、表面加工したコンクリートを漆黒の顔料で着色し、古い木の焼き板で覆われているような風合いを実現しています。キュロ・ディスティラリー社が所有するこの洗練された外観の建物は、ヘルシンキに拠点を置くアバント・アーキテクト社(Avanto Arkkitehdit Oy)によって設計され、2019年末にフィンランドコンクリート建築賞を受賞しています。
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カラーコンクリートで彩りを

近年、コンクリート建築は大きく進化し、グレー色に代表される一般的なコンクリート建築のみならず、都市や地域の景観との調和や施主の好みに応じて効果的な着色を施したカラーコンクリートによるスタイリッシュな建築が可能になりました。

ここでは、美しいカラーコンクリート建築を生み出す着色顔料のご紹介と、施工方法、施工事例をご紹介すると共に、気になる導入時のメリットやデメリットについても解説してまいります。

CONTENTS

  1. カラーコンクリートとは?
  2. カラーコンクリートの着色方法は?
  3. 色の種類と特徴は?
  4. カラーコンクリートのメリット・デメリットとは?
  5. カラーコンクリートの施工方法は?
  6. カラーコンクリート建築に使用されるランクセスの着色剤
©mhp - stock.adobe.com
写真:カラーコンクリートを使用した建築物イメージ

1. カラーコンクリートとは?

カラーコンクリートとは、無機顔料と呼ばれる着色剤をコンクリートに直接混ぜて使用する建築材料およびその工法です。日本国内ではこれまで、コンクリートの着色に塗装を用いる工法が一般的でした。しかしながら、ヨーロッパでは古くから顔料を混ぜて使うカラーコンクリートが使用されてきました。景観になじむ自然な色合いを演出し、耐久性・耐候性に優れたカラーコンクリートは、ヨーロッパの美しい街並みを支えてきた歴史ある工法といえます。




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写真:ランクセスの無機顔料バイフェロックスイメージ

2. カラーコンクリートの着色方法は?

カラーコンクリートの施工方法には、現場で生コンクリートやモルタルに直接顔料を現場で打設する現場打ちコンクリートと、顔料で着色したコンクリートを使用し、事前に専用工場で造るプレキャストコンクリートなどがあります。その他にも、コンクリート瓦、舗装ブロック、カラーモルタルなど、建物のさまざまな個所にカラーコンクリートを使用することができます。一般的には、個人住宅や集合住宅、ガレージ床や壁面など、比較的小規模の建築には現場打ちコンクリートやコンクリート瓦などに多く使用されています。一方で、大規模な集合住宅や商業施設、公共施設などには、現場打ちコンクリートのほかプレキャストコンクリート製品も多く使用されています。


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図:ランクセスの顔料を使用したカラーコンクリートのカラーバリエーション例



3. 色の種類と特徴は?

カラーコンクリートの色の種類は、基本となる無機顔料の色(赤・黄・緑・茶・黒)を組み合わせることで100種類以上もの色のバリエーションをもたせることが可能です。カラーコンクリートに使用される無機顔料は、酸化鉄、酸化クロム(III)といった自然にも存在する材料から作られます。
そのため色の特徴としては、有機材料を主原料に製造される塗料とは異なり、自然な色合いを演出することが出来ます。

©Ivelin Radkov - stock.adobe.com

4. カラーコンクリートのメリット・デメリットは?

カラーコンクリートの導入を実際に検討する際、気になるのはそのメリット、そしてデメリットではないでしょうか?

<メリット>

  • 耐候性・耐久性に優れている
  • コンクリート全体を着色しているため、傷や破損などによる色ムラが生じない
  • 塗り替えが不要なため、維持コストを低減できる
  • 着色により周囲の色合いとの調和がとれる
  • 着色による幅広いデザイン性を持たせることができる
  • 色の組み合わせによりカラーバリエーションが豊富

カラーコンクリートのメリットの一つには、その耐久性・耐候性が上げられます。コンクリートに無機顔料を直接混ぜ込み全体を着色しているため、表面だけを着色する塗装とは異なり、美しい色合いを長期間保つことが可能で、退色もほとんどありません。塗装であれば経年による塗膜の劣化や色の退色による塗り替えには多大な維持コストがかかりますが、カラーコンクリートは、このような塗り替えの必要がないため、維持コストの低減にもつながります。ヨーロッパの街並みを長きに亘り支えてきた高品質な無機顔料をご使用いただくことで、そのメリットを最大限に実感していただくことができます。

<デメリット>

  • 経験のある業者が限られる
  • 塗装に比べて初期のコストがかかる
  • 性能が限られた安価な製品も出回っているため、顔料の選定に注意が必要

カラーコンクリートを使用する際のデメリットとしては、現在、その使用方法について知識と経験を持つ施工業者が限られることから、業者から敬遠されがちなことです。しかしながら、近年、国内での採用も進んでいることから、そのデメリットも徐々に解消しつつあります。

また、無機顔料のメーカーによってはより安価な製品を提供する一方で、その性能が限られる場合があります。そのような製品を使用した場合には、メリットである耐久性や耐候性、色のバリエーションなどが限られる場合もありますので、顔料の選定には注意が必要です。

5. カラーコンクリートの施工方法は?

カラーコンクリートを使用する場合には以下のような施工方法が存在します。

  • 現場打ちコンクリート
  • プレキャストコンクリート
  • 舗装ブロック
  • カラーモルタル
  • コンクリート瓦
  • カラー(コンクリート)舗装など

ここでは、現場で型枠を組んで生コンを流し込む現場打ちコンクリートと、カーテンウォールなど予めコンクリート製品を工場で製造し現場に設置するプレキャストコンクリートについて詳しくご説明してまいります。

▶ 現場打ちコンクリート

現場打ちコンクリートは、主に4段階の工程が必要です。

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図:現場打ちコンクリートにカラーコンクリートを使用する場合の工程

① 試験練り

先ず第1段階として、対象となる建築物の設計・デザインに合った色合いを確認するために、少量のコンクリートと顔料を混ぜ合わせた試験練りを行います。実際に使うセメントや骨材を使用して、調合した顔料(又は既存色の顔料)と試験的に混ぜ合わせます。この試験練りを行うことで、実際の建築物がどのような色合いになるのかを事前に確認することが可能です。

② 顔料の混合

本施工の際、顔料の生コンとの混合には主にコンクリートミキサー車が用いられます。事前に試験練りで確認した顔料を、少しずつ均等に混ぜていきます。

③ コンクリートを型に流し込む

ミキサー車で混ぜ合わせたカラーコンクリートを型枠に流し込みます。完全に固まるまでの日数は、その配合にもよりますが、基本的に通常の生コンクリートと変わりません。

④ 型枠の取り外しおよび仕上げ(脱型)

所定の時間経過後に、型枠を取り外し仕上げていきます。仕上げ方法により、様々な意匠を表現することが出来ます。特にデザイン性の高い建築物には適した施工法です。

【カラーコンクリート施工事例 - 現場打ち】

ここ数年で現場打ちコンクリートによる国内での採用事例が増えてきました。2017年には、世界的な建築家のデビッド・チッパーフィールド氏による猪名川霊園施設に使用されています。それぞれ景観になじむ自然な色合いや建築の持つ可能性を広げる素晴らしい建築作品に仕上がっています。

Keiko Sasaoka
世界的な建築家のデビッド・チッパーフィールド氏により設計された猪名川霊園施設

▶ プレキャストコンクリート

次にプレキャストコンクリートの施工方法と施工事例についてご紹介します。プレキャストコンクリートとは、建築現場ではなく、あらかじめ専用工場などで製造されるコンクリート製品です。プレキャストコンクリートは、集合住宅や商業施設、公共施設など、比較的大規模な建築物への使用が一般的です。型枠の種類、ブラストや研磨といった表面加工に、顔料の色を組み合わせることで、様々なデザインや意匠を表現できることから近年普及が進んでいます。

プレキャストコンクリート施工方法(カーテンウォールの場合)

プレキャストコンクリートの使用用途は、建築物の非構造体、構造体への導入が可能で、建物の設計・寸法に合わせて、あらかじめ部材を製造し、現場で組み立てる工法をさします。ここでは、カラーコンクリートが多く使用されるプレキャストコンクリート部材の一種、カーテンウォールの施工方法について解説します。カーテンウォールは、建物の構造には寄与しない非耐力壁で、建物をカーテンのように覆う外壁材です。

PCカーテンウォールの施工には主に4つの工程が必要です。

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<span style="font-family: Lanxess, Helvetica, Verdana, Tahoma, sans-serif; font-size: 20px; font-style: normal; font-weight: 300;">図:プレキャストコンクリートにカラーコンクリートを使用する場合の工程</span>

① 製作図の作成

対象となる建築物の設計に基づき、部材となるカーテンウォールの製作図を作成します。建物の設計に合わせて、部材の寸法を設定するため、現場での寸法違いなどが起こりづらい特長があります。カラーコンクリートを使用する場合には、製作図の段階で着色する無機顔料の色の選定、調合計画などを行い、仕上げ材および表面デザインの選定を同時に行います。デザインには、表面を大理石や御影石のように仕上げる鏡面仕上げや、模様を施すグラフィック仕上げ、木目調などのパターン仕上げなど、コンクリートの色とデザインを組み合わせることで、壁面に魅力的な意匠を表現することが可能です。

② 鋼製の型枠を製作

仕上げ寸法及び表面デザインに合わせて、鋼製の型枠を製作します。 事前のサンプル製作などにより、仕上がりイメージを確認します。プレキャストコンクリートカーテンウォールを使用することで、大型の商業施設やオフィスビルの内外壁にも、幅広いデザインを表現することが可能になります。

③ コンクリート打設によるカーテンウォール製作

顔料で着色したカラーコンクリートを混合し、あらかじめ製作した専用の型枠に流し込んで、カーテンウォール部材を製作します。鋼製の型枠に化粧型枠を組み合わせたり、脱型後の表面加工によって様々なデザインを施すことが出来るのも特徴です。

④ 設置工事

出来上がったカラーコンクリートによるプレキャストコンクリートカーテンウォール部材を建設現場に運搬し、取り付けます。クレーンによる取り付けが一般的で、型枠工など専門の職人や足場の設置が不要です。

【プレキャストコンクリート施工事例】

プレキャストコンクリートのカーテンウォールを使用したカラーコンクリート建築は、世界各国に採用が広がっています。埼玉県草加市に位置する獨協大学では、正門をくぐると真正面に見えてくる美しい建物、学生センターにカラーコンクリート製カーテンウォールが使われています。ルーバー(細長い板を平行に組んだ外壁材)と呼ばれる日除けとしての印象的な外壁には、ランクセスの赤、黒、黄の無機顔料が使われ、緑豊かなキャンパスに自然に溶け込んでいます。また、大阪梅田駅ターミナルの北側に隣接する「グランフロント大阪」の外壁にも、カラーコンクリートを使用したプレキャストコンクリート部材が使用されています。駅庁舎や周辺の施設とを結びつける自然なベージュ系色のルーバーや、アクセントとして配された赤や黒の外壁が街の魅力を引き立てています。

6. カラーコンクリート建築に使用されるランクセスの着色剤

ランクセスは、ドイツに本社を置き世界25カ国以上で事業を展開するグローバルメーカーです。カラーコンクリートの着色剤である無機顔料の分野では90年以上の歴史を誇る世界最大のメーカーです。「バイフェロックス®(Bayferrox®)」と、「カラーサーム®(Colortherm®)」の商標名で販売されているランクセスの無機顔料は、赤、黄、茶、黒、緑を取り揃えています。これらの色から広範な色調を作り出すことができ、様々な分野の用途向けに計100以上もの異なる色相の製品群を提供しています。ランクセスの無機顔料は、酸化鉄および酸化クロムから作られ、各国の標準に準拠し、高品質かつ豊富な製品ラインアップから長きにわたり業界標準をけん引し、世界有数の製品ブランドとして認められています。また、高い製造技術を生かし、環境にやさしい製造工程を採用し製造されていることも特徴の一つです。

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